自民党がつくる憲法は、「国民しあわせ憲法」です
私たち自由民主党は、すでに昨年の総選挙における政権公約において、立党50年を迎える2005年11月までに新しい憲法草案をつくることを、国民のみなさんにお約束いたしました。私たちは、この約束を実行するべく、本年1月から、日本国憲法をすみずみまで点検する作業を着実に進めています。
現憲法は、「国民主権」「基本的人権の尊重」「平和主義」を三原則として、戦後日本の平和と繁栄に大きく貢献し、我が国に定着してきました。このことは高く評価すべきであり、これらの原則は、人類普遍の価値として、今後ますます維持・発展させていく必要があります。そして、私たちの考える新しい憲法は、国民の誰もが自ら誇りにし、国際社会から尊敬される「品格ある国家」を目指すものです。
また、科学技術の進歩や少子・高齢化の進展など、新たな課題に的確に対応するとともに、人間の本質である社会性が個人の尊厳を支える「器」であることを踏まえて、家族や共同体が、「公共」の基本をなすものとして位置づけられた憲法でなくてはならないものと考えます。
歴史、伝統、文化に根ざした我が国固有の価値(すなわち「国柄」)や、日本人が元来有してきた道徳心など健全な常識を大切にし、同時に、日本国、日本人のアイデンティティを憲法の中に見いだし、憲法を通じて、国民の中に自然と「愛国心」が芽生えてくるような、そんな新しい憲法にしなければならないと考えています。
私たちが目指す、この新しい憲法を一言で表すとすれば、それは、国民の国民による「国民しあわせ憲法」ということです。
このパンフレットは、党内のこれまでの議論を踏まえ、新しい憲法についての基本的な考え方と方向性を示し、憲法に関する国民的議論が活発に展開されることを願って作成したものです。
どうか、一人でも多くの国民のみなさんが、私たちの活動に加わっていただけますように……。憲法は、国民のみなさんのものなのですから!
憲法 | 自民案 |
前 文日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたつて自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものてあつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基くものである。われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。 日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。 われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであつて、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。 日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ。 |
1.美しい日本語で書かれた前文に 国の根幹を規定する最高法規が憲法ならば、その冒頭に置かれる前文は憲法の「顔」に当たるものです。 私たちは、憲法改正の際には、いまの日本国憲法の前文は全面的に書き改めるとの方向で検討を進めています。 新たな前文は、日本の目指すべき国家像を明記することです。それには、日本国憲法の基本原則である「国民主権」「基本的人権の尊重」及び「平和主義」とともに、(1)国民誰もが自ら誇りにし、国際社会から尊敬される「品格ある国家」を目指すことを明記すべき、(2)我が国の歴史、伝統、文化などを踏まえた「国柄」について言及すべき、(3)環境権や循環型社会の理念を書き込むべき、との様々な意見があります。 また、前文の表現それ自体についても、平易で分かりやすいものとし、美しい日本語の表現を用いるべきとの意見もあります。 憲法前文の内容・表現などについては、新憲法が真に国民による国民のための憲法となるよう、国民のみなさんのご意見を十分に聞きながら党内議論を行って、憲法全体を通じた理念が的確に表現されたものとなるよう、広範かつ総合的に検討してまいります。 |
第1章 天 皇第1条 天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であつて、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く。 第2条 皇位は、世襲のものであつて、国会の議決した 皇室典範の定めるところにより、これを継承する。 第3条 天皇の国事に関するすべての行為には、内閣の助言と承認を必要とし、内閣が、その責任を負ふ。 第4条 天皇は、この憲法の定める国事に関する行為のみを行ひ、国政に関する権能を有しない。 2 天皇は、法律の定めるところにより、その国事に関する行為を委任することができる。 第5条 皇室典範の定めるところにより摂政を置くときは、摂政は、天皇の名でその国事に関する行為を行ふ。この場合には、前条第一項の規定を準用する。 第6条 天皇は、国会の指名に基いて、内閣総理大臣を任命する。 2 天皇は、内閣の指名に基いて、最高裁判所の長たる裁判官を任命する。
第7条 天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行ふ。 第8条 皇室に財産を譲り渡し、又は 皇室が、財産を譲り受け、若しくは賜与することは、国会の議決に基かなければならない。 |
(該当する記載なし) |
第2章 戦争の放棄第9条 戦争放棄、軍備及び交戦権否認 1 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。 2 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。 |
2.「現実の平和」を創造し、非常事態に備える 日本の安全保障と国際貢献については、和を尊び、命を慈しむ我が国古来の伝統・文化を基本に据え、我が国民の生命と財産を守り、より積極的に世界の人々の生命・人権を尊重するという立場から、自衛のための戦力保持の明記や、国際協力(国際貢献)に関する規定の創設など国際平和に積極的・能動的に貢献する姿勢を内外に宣言します。 憲法9条の虚構性と「現実の平和」創造への努力 憲法9条では、戦力の保持は禁止され、日本には軍隊はありません。しかし、日本は独立国である関係から、国を防衛するために自衛隊があります。 戦後の憲法論議の中心は、9条と自衛隊の関連でした。 現在は、国民の多くが自衛隊の存在を高く評価しています。最近では、自衛隊も海外のPKO活動や人道支援活動で汗を流すようになりました。しかし、派遣要員が自己や同僚を守る目的なら武器は使えるが、同じ任務のために離れた場所で活動する外国軍隊や国際機関の要員のためには使えない、といった憲法解釈上の不備が指摘されています。これでは、軍隊としてはおかしな話です。 また、9条により集団的自衛権が行使できないと解釈されていることについても、「日米同盟の『抑止力』を減退させる危険性をはらんでいるのみならず、アジアにおける集団的な安全保障協力を効果的に推進する上での障害となる」との批判も出ています。 私たちの目指す9条の改正は、まず自衛隊を軍隊として位置付けることです。次に、集団的自衛権の行使も可能となるようにする必要があります。 現在は、国際テロリズムや北朝鮮の拉致事件などがあり「憲法9条を世界にPRすれば平和になる」というような状況ではないのです。国及び国民の安全が確保できるような憲法9条の改正をする必要があるのです。 平和への貢献を確かなものにするための「国際協調主義」 日本国憲法は、その前文で、全世界の国民の平和的生存権を認めた上で、「自国のことのみに専念して他国を無視してはならない」と述べ、こうした国際協調主義の立場に立つことは「各国の責務である」としています。 私たちは、このような国際協調主義の考え方は優れたものであり、今後とも堅持すべきであると同時にこの考え方をもっと大きく育てていく必要があると考えています。 このような国際協調主義の考え方の下に、戦後日本が平和国家として国際的信頼と実績を築いてきたことは高く評価されるべきですし、これを今後とも重視していくべきだと考えています。 私たちは、先の総選挙の政権公約で約束した「国際平和協力のための基本法の制定」作業を進めると同時に、我が国が世界平和のために責任を果たす国家であることを憲法上明らかにするようにいたします。 非常事態に備えて 私たちは、憲法には、平和時のことだけでなく、有事とか非常事態への対応も規定すべきものだと考えます。 これに対して、日本国憲法には、先の戦争は日本が起こしたもので、日本さえ戦争を起こさなければ、周辺の国々は良い国で戦争は起きない、といった考え方から有事や非常事態の規定がないのです。 新憲法では、非常事態における総理への権限の集中や武力攻撃事態、大規模なテロや大規模自然災害の発生などにより、多数の国民の生命、身体及び財産が危機に瀕し、統治機関の枢要部分が欠けた場合のダメージを拡大させず、少なくする方向に作動するような仕組みを作っておく必要があります。 最近、法律レベルでは、武力事態対処法や国民保護法など有事法制の整備が行われるようになってきましたが、これは国家としては当然のことなのです。 しかし、それだけではなく、非常事態における包括的な憲法原則を明確にする必要があります。具体的には、非常事態においてやむを得ず行われる権利・自由の制限など、国家権力の行使の代替措置をあらかじめ決めておくことです。それによって、非常事態における恣意的な権利・自由の制限を防ぎ、国家権力の円滑な行使を可能とすることになります。 |
第3章 国民の権利及び義務第10条 日本国民たる要件は、法律でこれを定める。 第11条 国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。 第12条 この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。 第13条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。
第14条 すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
第15条 公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。
第16条 何人も、損害の救済、公務員の罷免、法律、命令又は規則の制定、廃止又は改正その他の事項に関し、平穏に請願する権利を有し、何人も、かかる請願をしたためにいかなる差別待遇も受けない。 第17条 何人も、公務員の不法行為により、損害を受けたときは、法律の定めるところにより、国又は公共団体に、その賠償を求めることができる。 第18条 何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない。 第19条 思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。
第20条 信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。
第21条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。 2 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。
第22条 何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。 第23条 学問の自由は、これを保障する。 第24条 婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。 2 配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。
第25条 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
第26条 すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。
第27条 すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ。
第28条 勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。
第29条 財産権は、これを侵してはならない。
第30条 国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負ふ。 第31条 何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。 第32条 何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。 第33条 何人も、現行犯として逮捕される場合を除いては、権限を有する司法官憲が発し、且つ理由となつてゐる犯罪を明示する令状によらなければ、逮捕されない。 第34条 何人も、理由を直ちに告げられ、且つ、直ちに弁護人に依頼する権利を与へられなければ、抑留又は拘禁されない。又、何人も、正当な理由がなければ、拘禁されず、要求があれば、その理由は、直ちに本人及びその弁護人の出席する公開の法廷で示されなければならない。
第35条 何人も、その住居、書類及び所持品について、侵入、捜索及び押収を受けることのない権利は、第33条の場合を除いては、正当な理由に基いて発せられ、且つ捜索する場所及び押収する物を明示する令状がなければ、侵されない。 第36条 公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる。
第37条 すべて刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有する。
第38条 何人も、自己に不利益な供述を強要されない。
第39条 何人も、実行の時に適法であつた行為又は既に無罪とされた行為については、刑事上の責任を問はれない。又、同一の犯罪について、重ねて刑事上の責任を問はれない。 第40条 何人も、抑留又は拘禁された後、無罪の裁判を受けたときは、法律の定めるところにより、国にその補償を求めることができる。 |
3.新しい時代に即した「新しい人権」を 高度情報化社会に対応した人権規定 近年のいわゆるIT技術の進展により、世界的規模で高度情報化社会が形成されつつあります。日本国憲法が制定されたときは、今日のように大量の情報が瞬時に世界を駆けめぐる時代が来るとは想像もつかなかったことでしょう。 情報化社会の到来により、「個人に関する情報(個人情報)の保護」及び「政府が有する情報(政府情報)の公開」をめぐって、「プライバシー権」及び「知る権利」といったいわゆる「新しい人権」の内容についても、突っ込んだ議論がなされています。 (1) プライバシー権 この権利は、はじめは「(国家から)ひとりで放っておいてもらう権利」と把握されていました。どちらかというと自由権的な、消極的なものと理解されていたわけです。しかし、情報化社会の進展に伴い、「個人情報をコントロールする権利(情報プライバシー権)」ととらえられ、とくに行政機関の有する個人情報の保護を積極的に請求していくという側面が重視されるようになりました。 (2) 知る権利 この権利は、はじめは「(国家から)干渉されずに自分の意見をもつ自由」、「情報及び思想を求め、受け、及び伝える自由」と把握されていました。それは「表現の自由」全般を支える基礎的理念と理解されていたからです。 しかし、情報化社会の進展に伴い、「政府情報の開示を請求する権利」ととらえられ、とくに行政機関の有する情報の公開を積極的に請求していくという側面が重視されるようになりました。 これらの権利については、「行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第58号)」や「行政機関の保有する情報の公開に関する法律(平成11年法律第42号)」の施行状況を踏まえ、国民のみなさんのご意見を十分に聞きながら、党内議論を行って、憲法上どのように位置づけるか検討してまいります。 生殖医療・遺伝子技術、移植医療の発達と生命倫理 近年における生殖医療・遺伝子技術、移植医療の発達には、目を見張るものがあります。 その中でも遺伝子技術については、科学として、人類に新しい知見を与えたという点ではプラスの影響力があります。しかし、例えばヒトクローンの研究となると、社会的に微妙な問題が生じる可能性があります。生殖医療、移植医療についても、生命倫理上問題になった事例が少なからず見受けられます。 こうした事態は、日本国憲法がおよそ予想していなかったものです。 私たちは、生命倫理が、個人の尊厳にかかわる人権問題であり、同時に生命の尊重、自然の摂理と人間の存在の意味にかかわる深刻な問題をはらんでいるものと認識しています。 この問題については、「ヒトに関するクローン技術等の規制に関する法律(平成12年法律第146号)」や「臓器の移植に関する法律(平成9年法律第104号)」の施行状況を踏まえつつ、憲法上どのように位置づけるべきかを検討してまいります。 犯罪被害者の権利 日本国憲法は、刑事事件の被疑者、被告人の権利は数カ条を費やしてこれを保護していますが、犯罪被害者の保護については一切の言及がありません。 アメリカでは、1980年代以後から、ようやく犯罪被害者の権利に関する意識が高まり、州レベルで犯罪被害者の権利章典が制定され、州憲法に規定されるようになったということですから、約60年前に制定された日本国憲法がふれていないのも無理からぬことかもしれません。 しかし、犯罪被害者がその犯罪に関する刑事裁判から疎外されることは、被害の回復を遅らせるとともに、刑事手続に対する不信感、不満感を増加させることにつながります。私たちは、犯罪被害者の迅速で完全な被害回復ができるよう、憲法において、こうした権利を保護することも十分検討に値すると考えています。 環境権・環境保全義務 ますます深刻化する地球環境問題に対処するため、国際的な環境保護運動が広がりをみせています。我が国でも、天然資源の消費が抑制され、環境への負荷ができる限り低減される循環型社会の形成に向けての取り組みが進んでいます。 こうしたなか、諸外国において、環境に関する規定を憲法に設ける動きが出てきました。これらの規定を詳細にみると、(1)国民の人権として規定するもの、(2)国民の義務ないし責務として規定するもの、(3)国の義務ないし責務として規定するもの、あるいはこれらを組み合わせるなど、バラエティーに富んだものとなっています。 日本国憲法が制定されたときには、今日のような形で環境問題が意識されていなかったことから、何らの言及もありません。しかし、環境保全に対する国民の意識の高まりを考えるとき、憲法に環境に関する規定をきちんと位置づけることを検討する必要があります。 4.「公共」とは、お互いを尊重し合うなかまのこと 他人を尊重することからはじまる「公共」 日本国憲法は、基本的人権を「侵すことのできない永久の権利」として保障しています(11条)。基本的人権は人類の普遍的価値であり、我が国は永久にこれを尊重することを基本とすべきです。 各人が、「個人として尊重」され(13条)、それぞれが「永久不可侵の基本的人権」を有するということは、同時に、他人も同じ「永久不可侵の基本的人権」を有しているということです。 人間は社会的な存在であり、人間としての尊厳をもっとお互いに大切にすべきです。他人への配慮や思いやり、社会に対する積極的な貢献を果たすことによって、自己の存在、尊厳もまた大事にされるのではないでしょうか。このように、人間の本質である社会性が個人の尊厳を支える器であることを考えると、人間の自然な集まりである家族、共同体、ひいては国際社会も、公共の基本をなすものとしてとらえ直さなければならない時代になっているのです。 各人が他人を思いやり、相互に尊重し合えば、個人の関係からなるネットワークができます。これが「公共」です。 「独りよがり」の人権主張ではなく、他人を尊重する責務からはじまる「公共」の概念を、私たちは大切にしていきたいと考えています。 家族は、一番身近な「小さな公共」 さて、互いに尊重し合う個人のネットワーク、「公共」の一番身近で小さな形態は、家族です。家族の構成員は相互に尊重し合う責務を負うのですが、通常は、そういうことを意識することはありません。 しかし、児童・老親虐待の問題が深刻化する事態を受けて家族の在り方が問われるなかで、家族間の責務、すなわち児童を養育する責務や老親を扶養する責務を憲法に明記すべきであるという意見があります。 この問題については、国民のみなさんのご意見を十分に聞きながら、様々な角度から党内議論を行い、憲法上どのように位置づけるべきか検討してまいります。 国家は、みんなで支える「大きな公共」 現在の日本のような民主主義国家は、国民全体の支えの上に存在しています。自立し、互いに他を尊重し合う個人のネットワークである「公共」の一番大きな形態は、国家といえるでしょう。「独立の気力のない国民は、国を愛する精神にも浅薄である」(福沢諭吉)と言われています。 国家とは、主権を保持し、国土を守り、国民の生命、身体及び財産を保護する崇高な使命を負っているわけですが、比喩的に言えば、それはひとりひとりの国民の「他者の権利・自由を尊重しなければならない」という「責務」が集まってできたものともいえます。すなわち、「国家」とはどこか遠いところにある抽象的な存在なのではなくて、自分の愛する家族や隣人とかの権利・自由の集合体と考えた方がわかりやすいかもしれません。 最近は、個人主義が正確に理解されず、利己主義的な側面ばかりが強調された結果、自分のことばかり考えて国家や地域社会のことを顧みない風潮がはびこるようになりました。いかに自由があるとはいえ、自らの行動が他人に迷惑をかけることになれば、それは自由とはいえないのです。 国家の構成員としての国民の責務や日本古来の伝統・文化を尊重する責務を憲法に明記すべきではないか、といった点について様々な角度から党内議論を行い、憲法上どのように位置づけるか検討してまいります。 かつて日本人が諸外国から親切で礼儀正しいと言われ尊敬されたのは、道徳教育が行き渡り、「修身、斉家、治国、平天下」(大学)という考え方があったからです。 今後は、「他人への思いやりの心」を育てて行くことが何よりも大切なことだと考えます。 |
第4章 国 会第41条 国会は、国権の最高機関であつて、国の唯一の立法機関である。 第42条 国会は、衆議院及び参議院の両議院でこれを構成する。
第43条 両議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する。
第44条 両議院の議員及びその選挙人の資格は、法律でこれを定める。但し、人種、信条、性別、社会的身分、門地、教育、財産又は収入によつて差別してはならない。 第45条 衆議院議員の任期は、4年とする。但し、衆議院解散の場合には、その期間満了前に終了する。 第46条 参議院議員の任期は、6年とし、3年ごとに議員の半数を改選する。 第47条 選挙区、投票の方法その他両議院の議員の選挙に関する事項は、法律でこれを定める。 第48条 何人も、同時に両議院の議員たることはできない。 第49条 両議院の議員は、法律の定めるところにより、国庫から相当額の歳費を受ける。 第50条 両議院の議員は、法律の定める場合を除いては、国会の会期中逮捕されず、会期前に逮捕された議員は、その議院の要求があれば、会期中これを釈放しなければならない。 第51条 両議院の議員は、議院で行った演説、討論又は表決について、院外で責任を問はれない。 第52条 国会の常会は、毎年一回これを召集する。 第53条 内閣は、国会の臨時会の召集を決定することができる。いづれかの議院の総議員の4分の1以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない。
第54条 衆議院が解散されたときは、解散の日から40日以内に、衆議院議員の総選挙を行ひ、その選挙の日から30日以内に、国会を召集しなければならない。
第55条 両議院は、各々その議員の資格に関する争訟を裁判する。但し、議員の議席を失はせるには、出席議員の3分の2以上の多数による議決を必要とする。
第56条 両議院は、各々その総議員の3分の1以上の出席がなければ、議事を開き、議決することができない。
第57条 両議院の会議は、公開とする。但し、出席議員の3分の2以上の多数で議決したときは、秘密会を開くことができる。
第58条 両議院は、各々その議長その他の役員を選任する。
第59条 法律案は、この憲法に特別の定のある場合を除いては、両議院で可決したとき法律となる。
第60条 予算は、さきに衆議院に提出しなければならない。
第61条 条約の締結に必要な国会の承認については、前条第2項の規定を準用する。 第62条 両議院は、各々国政に関する調査を行ひ、これに関して、証人の出頭及び証言並びに記録の提出を要求することができる。 第63条 内閣総理大臣その他の国務大臣は、両議院の一に議席を有すると有しないとにかかはらず、何時でも議案について発言するため議院に出席することができる。又、答弁又は説明のため出席を求められたときは、出席しなければならない。
第64条 国会は、罷免の訴追を受けた裁判官を裁判するため、両議院の議員で組織する弾劾裁判所を設ける。 |
5.緊張感をもって切磋琢磨する、統治機構のしくみ
しかし、現在の政策決定システムは、国会と内閣などとの関係において、最終的に国会の同意を得るに至るまでの間にあまりにも多くの時間を要するシステムになっているのではないでしょうか。 日本国憲法が制定された約60年前と、今とでは大きく時代が違います。既存のシステムがうまく機能しない場合には、大胆に発想を転換するべきだと考えます。 なお、現在の二院制は、両院の権限や選挙制度が似かよったものとなっており、何らかの改編が必要であり、その具体策の提示が求められています。また、総理大臣以下の国務大臣の国会への出席義務を緩和し、副大臣などの代理出席でもよいとすることなどについても、今後検討する必要があります。 政治部門をチェックする裁判所のあり方 政策決定・執行プロセスのスピードアップ化に伴い、事後的な第三者のチェックが重要になってきます。こうした観点から、政治部門が行う政策決定・執行に対する憲法判断の仕組みを整備する必要があります。そこで、我が国においても、憲法裁判所を創設し、高度に政治的な問題についてもきちんとした憲法判断を出させるようにすべきであるとの意見があります。 憲法裁判所については、国会や内閣が負うべき政治の責任を民主的な基盤(主たる構成員が国民の選挙で選ばれた者であること)のない裁判所に負わせるのはおかしいとの指摘もあります。 しかし、諸外国の憲法裁判所のように、裁判官の人選について国会が関与するといったことで、民主的統制を機能させることは可能です。法律的素養があって、かつ、政治的判断ができる人が裁判官になれば、高度な政治判断も可能になるでしょう。さらに、憲法裁判所ができても、国民の代表機関である国会が有する憲法改正の発議権まで否定されるものではなく、憲法裁判所がある問題について違憲判決を出しても、それに不服であれば国会としての責任で憲法改正を発議すればよいのです。 憲法裁判所の創設は、国会や国民が憲法に関する関心の度合いを高めるとともに、政治部門と裁判所のほどよい緊張関係の下に憲法を見直していく良い機会を提供するものと考えます。 ★ここに第8章対応部分あり |
第5章 内 閣第65条 行政権は、内閣に属する。
第66条 内閣は、法律の定めるところにより、その首長たる内閣総理大臣及びその他の国務大臣でこれを組織する。
第67条 内閣総理大臣は、国会議員の中から国会の議決で、これを指名する。この指名は、他のすべての案件に先だつて、これを行ふ。
第68条 内閣総理大臣は、国務大臣を任命する。但し、その過半数は、国会議員の中から選ばれなければならない。
第69条 内閣は、衆議院で不信任の決議案を可決し、又は信任の決議案を否決したときは、10日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならない。 第70条 内閣総理大臣が欠けたとき、又は衆議院議員総選挙の後に初めて国会の召集があつたときは、内閣は、総辞職をしなければならない。 第71条 前2条の場合には、内閣は、あらたに内閣総理大臣が任命されるまで引き続きその職務を行ふ。 第72条 内閣総理大臣は、内閣を代表して議案を国会に提出し、一般国務及び外交関係について国会に報告し、並びに行政各部を指揮監督する。
第73条 内閣は、他の一般行政事務の外、左の事務を行ふ。
第74条 法律及び政令には、すべて主任の国務大臣が署名し、内閣総理大臣が連署することを必要とする。 第75条 国務大臣は、その在任中、内閣総理大臣の同意がなければ、訴追されない。但し、これがため、訴追の権利は、害されない |
上に含まれている |
第6章 司 法第76条 すべて司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する。
第77条 最高裁判所は、訴訟に関する手続、弁護士、裁判所の内部規律及び司法事務処理に関する事項について、規則を定める権限を有する。
第78条 裁判官は、裁判により、心身の故障のために職務を執ることができないと決定された場合を除いては、公の弾劾によらなければ罷免されない。裁判官の懲戒処分は、行政機関がこれを行ふことはできない。
第79条 最高裁判所は、その長たる裁判官及び法律の定める員数のその他の裁判官でこれを構成し、その長たる裁判官以外の裁判官は、内閣でこれを任命する。
第80条 下級裁判所の裁判官は、最高裁判所の指名した者の名簿によつて、内閣でこれを任命する。その裁判官は、任期を10年とし、再任されることができる。但し、法律の定める年齢に達した時には退官する。 第81条 最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である。
第82条 裁判の対審及び判決は、公開法廷でこれを行ふ。
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6.現実に即した憲法の規定に
憲法79条6項後段及び80条2項後段は、最高裁判所裁判官及び下級裁判所裁判官の報酬は、それぞれ「在任中、これを減額することができない。」と規定しています。ところが、最高裁は、平成14年9月、裁判官会議で、公務員給与全体のベースダウンに合わせて、全裁判官の報酬を一律に引き下げることは、合憲であると判断し、現行憲法下で初めて裁判官給与を引き下げることを決めました。 憲法のどこを読んでも、裁判官の報酬を減額できる場合があるなどとは規定されていません。「憲法の番人」と呼ばれる最高裁自身が、憲法の明文の規定に違反するような行為をしているのです。 私たちは、いかなる場合であっても裁判官の報酬を下げてはいけないと言っているのではありません。合理的理由に基づき裁判官の報酬を下げるのであれば、こういう場合には報酬を下げることができますと、はっきり憲法を改正してからやるべきだと思います。 |
第7章 財 政第83条 国の財政を処理する権限は、国会の議決に基いて、これを行使しなければならない。 第84条 あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする。 第85条 国費を支出し、又は国が債務を負担するには、国会の議決に基くことを必要とする。 第86条 内閣は、毎会計年度の予算を作成し、国会に提出して、その審議を受け議決を経なければならない。
第87条 予見し難い予算の不足に充てるため、国会の議決に基いて予備費を設け、内閣の責任でこれを支出することができる。
第88条 すべて皇室財産は、国に属する。すべて 皇室の費用は、予算に計上して国会の議決を経なければならない。 第89条 公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない。
第90条 国の収入支出の決算は、すべて毎年会計検査院がこれを検査し、内閣は、次の年度に、その検査報告とともに、これを国会に提出しなければならない。
第91条 内閣は、国会及び国民に対し、定期に、少くとも毎年一回、国の財政状況について報告しなければならない。 |
私学助成と憲法89条の関係について 憲法89条は「公の支配に属しない」教育事業に対して公金その他の公の財産を支出することを禁じていますが、これを厳格に解すると現行の私学助成制度には、違憲の疑いが出てきます。なぜならば、公の支配に属しないからこそ「私立学校=私学」であるわけで、「公の支配に属する私学」というのは、それ自体が矛盾した言い方になるからです。 現実には、私学助成制度がなければ我が国の私立学校は存立することができず、この状況を素直に認めるならば、憲法89条の規定を一刻も早く改正するのが筋というものでしょう。 |
第8章 地方自治第92条 地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基いて、法律でこれを定める。
第93条 地方公共団体には、法律の定めるところにより、その議事機関として議会を設置する。 第94条 地方公共団体は、その財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行する権能を有し、法律の範囲内で条例を制定することができる。 第95条 一の地方公共団体のみに適用される特別法は、法律の定めるところにより、その地方公共団体の住民の投票においてその過半数の同意を得なければ、国会は、これを制定することができない。 |
活力のある地方政府と中央政府の関係 私たちは、地方自治について、「道州制」を含めた新しい地方自治のあり方を模索しています。その場合、住民に身近な行政はできる限り市町村といった基礎自治体に分担させることとし、国は国としてどうしてもやらなければならない事務に専念するという「補完性の原則」の考え方と、その裏付けとなる自主財源を基礎自治体に保障していくという方針が決定的に重要になってきます。 地方に自己決定権を与えるとともに自己責任を負わせることによって、地方の努力をうまく引き出せるようにするには、いまの都道府県より広範な単位、すなわち「道州」が適当であると考えます。 各道州がそれぞれ努力していけば、全体としての国の力を最大化することができる、という「道州制」構想については、今後細部にわたって議論をしていく必要があり、新しい憲法には、こうした点を明示するべきでしょう。 「道州制」というと、すぐに道とか州の権限、組織などに目が向きがちですが、住民に一番身近なコミュニティの重要性を忘れてはなりません。コミュニティこそ究極の自治の原点であり、我が国の伝統、文化が受け継がれていく場であり、地域によってはそこが生産活動、社会活動の場であり、生活そのものです。人や物の動きの激しい、こういう時代だからこそ、広域的自治体を整備する一方で、顔が見える自治組織をきちんと守り、育てていくことが必要ではないでしょうか。 国会と内閣の関係、憲法裁判所を含む裁判所制度、地方自治のあり方など統治機構の問題については、国民のみなさんのご意見を十分に聞きながら、引き続き、さまざまな角度から党内議論を行い、憲法改正が必要と認められる事項の整理を行ってまいります。 |
第9章 改 正
第96条 この憲法の改正は、各議院の総議員の3分の2以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。
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憲法改正手続について 憲法96条1項は、国会が憲法改正を発議するには各議院の総議員の3分の2以上の賛成を要すると規定しています。しかし、この要件が厳格に過ぎて、いまの憲法を改正することが困難になっているとの指摘があります。 国民投票をもっと容易に行えるようにし、国民に憲法について考える機会を多く与えるためにも、憲法改正の発議は各議院の総議員の過半数の賛成で足りるとするべきでしょう。 さらに憲法96条1項は、憲法改正の際の国民投票について、「特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において」と規定しています。しかし、なぜこの2種類の国民投票を定めたのか、特に後者の国民投票についてわざわざ言及する必要がなぜあったのか、趣旨が不明です。 そもそも「国会の定める選挙」すなわち国政選挙は、与野党が政権の維持・獲得を目指し、それぞれの政策を提示して相争うものです。そのような国政選挙と、憲法改正案の賛否を問う国民投票とは、性格が全く異なるものです。仮に国政選挙と国民投票を同時に行えば、有権者は混乱してしまうでしょう。 以上のような理由から、本条項の「又は国会の定める選挙の際行はれる投票」は、削るべきでしょう。 |
第10章 最高法規第97条 この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であつて、これらの権利は、過去幾多の試錬に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。
第98条 この憲法は、国の最高法規であつて、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。
第99条 天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。 第11章 補 則
第100条 この憲法は、公布の日から起算して6箇月を経過した日から、これを施行する。 第101条 この憲法施行の際、参議院がまだ成立してゐないときは、その成立するまての間、衆議院は、国会としての権限を行ふ。 第102条 この憲法による第一期の参議院議員のうち、その半数の者の任期は、これを3年とする。その議員は、法律の定めるところにより、これを定める。 第103条 この憲法施行の際現に在職する国務大臣、衆議院議員及び裁判官並びにその他の公務員で、その地位に相応する地位がこの憲法で認められてゐる者は、法律で特別の定をした場合を除いては、この憲法施行のため、当然にはその地位を失ふことはない。但し、この憲法によつて、後任者が選挙又は任命されたときは、当然その地位を失ふ。 |
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